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急にしょんぼりし始めた俺に咲人さんが不思議そうな目を向ける。
「どうした?」
「いえ…」
「寂しいか?」
ズバッと言い当てられてしまい、すぐに二の次が出てこずに代わりにため息が出てきた。
「寂しいとか…俺が言っちゃ駄目だから」
「何でそんな風に思うんだ?」
「だって…離れるのは俺なのに」
言いながらだんだんと声が小さくなっていく。
咲人さんは離れていかない。
離れてしまうのは俺の方だ。
咲人さんに寂しい思いをさせてしまうのは俺なのに、その俺が寂しいとか言うのは何かおかしい気がして、言えないなって思う。
でも、正直凄く寂しい。
「咲人さんは…」
「ん?」
寂しいですか?って聞きそうになって口をつぐんだ俺に、咲人さんは少し首を傾げて俺の顔を覗き込んだ。
寂しいに決まってる。
それなのに敢えて口にさせるのは酷い。
と思ったのんだけど、どうやら咲人さんにはそんな事全部お見通しみたいで。
「寂しくないとは言えないな」
頬づえをつきながら、しかもあまりいつもと変わらない口調で言うから困る。
そんな俺に咲人さんは小さく笑みをこぼす。
「奏と離れるのは辛い。それは正直な気持ちだ」
「…はい」
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