三章:予定調和

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「決着に三十分を使った一回戦は手を抜いていたと見るべきでしょうか」 「どーやろな。元々、自分らで好きなように動き回れば勝てるだけのポテンシャルはあったやでな。その辺りを見極めるに際して一回戦は調整の意味合いもあったんやろうけど、それにしてもえらく遅かってん」 放送部のショートボブの女子の問いかけに、フレームの分厚い眼鏡を掛けたおさげの女子が似非関西弁を返す。 「多分やけれど、これは先に決勝へ駒を進めはった執行部さんへの宣戦布告どすえ」 「ここで苦情が届きましたので音読させて頂きます。解説の人が何を言っているか解らない。解説われこらぁ日本語で喋れや。解説は関西を馬鹿にしているのか、いてこますぞ。解説の前に京都弁と大阪弁の違いから勉強した方がいいと思います。あ、今の投稿が記念すべき本日百件目のクレームになりますね」 「言いたい放題やなぁ。あったまくるわぁ。匿名やからって身バレしないと思ったら大間違いやで? うちら”裏”新聞部の情報網を舐めたらあかんよ? ジャーナリズムの力でいわてこすたるか?」 「いてこましたろか、と言いたかったのだと思われます。話が大分横道に逸れてしまいました。今の戦闘のハイライトを――いや、最初から最後まで通しで見て頂きながら解説をしていきます」 放送部の女子の言葉に倣ってステージ上の機材が保存したばかりの映像を流し始めた。おさげ女子は咳払いをして声の調子を整える。 「チーム『GwD』の強みは、まず何と言ってもAランクエフェクト解放者の枚数どすえ」 「かの執行部を容易に凌ぐその数は何と十四。消息筋の間では――」 実況者は意味ありげに解説の女生徒を横目に見てから。 「――チーム名の由来は『ゲーマー同盟とDIVA《Gamer alliance with DIVA》』ではなく『God will die《神は死ぬ》』であると噂になっているだけある布陣です」 「ソースはワシだで。ゲーマー同盟からはベルガモットこと金井(カナイ)、フェンリルこと斎宮(イツキ)……」 お下げ髪の女生徒はプライバシーモードで展開している画面(ディスプレイ)に一度も視線を落とす事なく十四名の猛者の名前をつらつら並べていく。 「いま挙げた連中は一人一人が特集を組めるレベルの戦略級のエフェクトを引っ提げとるわけやけど、この環境で特に猛威を振るっているのはやはり魔眼の君の一人――宮園どすな」
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