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そうさなぁ、あれは何処だったか。
夕刻、俺は山を越えようとしていたんだが、道に迷ってしまってな。
まだ麓には近いはずだったからなんとかなるだろうと思って歩いていたんだが、なんせ秋の日は釣瓶落しだ。
あれよあれよと日が暮れていった。
いくら俺が脳天気とはいえ弱ったね。
流石に途方に暮れた。
しかし立ち尽くしてもいられないから野宿できる場所はないかと月明かりを頼みに歩いていたら、前の方で何か光るものが見えた。
松明の明かりだった。俺は天の助けと思ったね。
地元の者なら道が聞けるし、野宿にしても一人より二人の方がずっと安全だ。
だが、それはすぐに間違いだと悟った。
そいつは狐だった。
松明を持って歩いていたのは狐だったんだ。
後ろ足で立って、前足で器用に手持ち灯籠を持っていた。
たまげたのなんのって。
それにその狐一匹だけじゃなかった。
一つ二つと明かりが増えていく。
狢に狸、
割れた茶碗に手足がついたようなモノ、
双頭の鴉、
首だけで飛び跳ねているモノ、
骨だけで動いているモノ、
唐傘に一本足が生えたモノ、
煙の形をしたモノ、
その他よく分からない形をしたモノが山ン中から湧くように現れて、同じ方向に向かって歩いていく。
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