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「何が…って、真琴ちゃんとの〝やらしい〟こと」
「………はあ?!」
古庄の顔が、みるみる間に真っ赤に変わっていくのを、晶は笑いを噛み殺しながら冷静に観察している。
「…じっ、自分こそ、どんな〝やらしい〟こと考えてるんだよ!あんな所で、そんなことするわけないだろ?」
焦ってそう言い返しながら、古庄は晶の洞察力に恐れを感じた。何で、自分の考えていたことが判ってしまうのだろうと…。
とにかく、晶と会話をしていると、いつもこんな調子でからかわれてしまう。晶はその時々の古庄の反応や様子を見て、楽しんでいるのだ。そう、子どもの頃から。
早く晶の傍を離れようと、古庄は足早に周り縁の廊下を歩いて、居間へと向かう。障子を開けると、居間の向こうの台所に立つ真琴の姿が認められた。
救いの神を見つけたような気がして、古庄の心がホッと落ち着く。いつも居心地の悪かった実家のこの居間も、まるで別の場所のように思われた。
「ああ、晶が和彦を起こしてきてくれたわ。さあ、食べましょ!」
「はい」
真琴が母親と共に、お盆に朝食を載せて運んでくる。
「おはようございます。和彦さん」
「おはよう」
〝一緒に料理をする〟という母親との約束が果たせて、真琴はとても満足そうだ。
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