1人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
「クレイシャ!!」
フレイマーナが妹のストニーノと走って橋を渡り切ると、後方にいたクレイシャに向かって叫ぶ。橋の下はマグマが蠢き、人肉を溶かさんと待ち構えている。
蔦で出来た橋が魔王の覚醒により突然ほつれ行く中、クレイシャは死を覚悟したが、エルフ特有の身軽さで橋が崩壊し切るより素早くフレイマーナとストニーノのいる反対岸にしがみ付き、無我夢中で泡立つマグマから逃れた。
クレイシャは叫ぶ。
「後は任せた!同士よ。何としてでも魔王を討ち取るのだ!!」
フレイマーナはしばらく考え込んだ様子でため息を吐き、応じる。
「貴方はよくやってくれた!感謝する!同士よ。躊躇うな。故郷へ帰れ!!」
「ここまで来て脱落とはな。エルフの恥として語り継がねばなるまい」
地鳴りがした。洞窟が崩れようとしている。
ストニーノが禁じられた言葉を叫んだ。
「クレイシャ!貴方のことが好きでした!!」
マグマの中に大きな岩が落ちて、崖に割れ目が入り始める。
クレイシャは最後に一言「私もだ!!」と叫び返すと自らの身を守る光の大精霊をストニーノに託し、マグマの海に沈みゆく岩をひょいひょいと渡り歩いて、魔王の巣から逃れる。
途中で振り返り、フレイマーナとストニーノが魔王の元へ一直線に走って行く姿を確認すると、クレイシャはエルフの魔法を詠唱して、眩しい光の中に飛び込み、最後に記憶したエルフの湖に水飛沫を上げて降り立った。
最初のコメントを投稿しよう!