第1章 英雄に憧れる少女

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「クレイシャ!!」 フレイマーナが妹のストニーノと走って橋を渡り切ると、後方にいたクレイシャに向かって叫ぶ。橋の下はマグマが蠢き、人肉を溶かさんと待ち構えている。 蔦で出来た橋が魔王の覚醒により突然ほつれ行く中、クレイシャは死を覚悟したが、エルフ特有の身軽さで橋が崩壊し切るより素早くフレイマーナとストニーノのいる反対岸にしがみ付き、無我夢中で泡立つマグマから逃れた。 クレイシャは叫ぶ。 「後は任せた!同士よ。何としてでも魔王を討ち取るのだ!!」 フレイマーナはしばらく考え込んだ様子でため息を吐き、応じる。 「貴方はよくやってくれた!感謝する!同士よ。躊躇うな。故郷へ帰れ!!」 「ここまで来て脱落とはな。エルフの恥として語り継がねばなるまい」 地鳴りがした。洞窟が崩れようとしている。 ストニーノが禁じられた言葉を叫んだ。 「クレイシャ!貴方のことが好きでした!!」 マグマの中に大きな岩が落ちて、崖に割れ目が入り始める。 クレイシャは最後に一言「私もだ!!」と叫び返すと自らの身を守る光の大精霊をストニーノに託し、マグマの海に沈みゆく岩をひょいひょいと渡り歩いて、魔王の巣から逃れる。 途中で振り返り、フレイマーナとストニーノが魔王の元へ一直線に走って行く姿を確認すると、クレイシャはエルフの魔法を詠唱して、眩しい光の中に飛び込み、最後に記憶したエルフの湖に水飛沫を上げて降り立った。
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