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「…ゴフッ…これは完全に私の油断ですね…」
崩壊した孤児院。
至る所から煙が立ち上り、燃え、倒壊し、消滅してしまった家々。
ーーさっきまでとは違う光景…。あぁ、またか。
平和だった街並みは残されていなかった。
幽霊の如く半透明になった優以は先程まで視覚を共有してした存在…姿も違うが、恐らく未来の自分自身を眺める。
「主様!?…くッ」
突如影の中から現れた漆黒の服を纏う少女は、光の柱に磔にされ鳩尾に黒く不気味なオーラを纏う短剣が突き刺さった先程までの優以に手を伸ばそうとするが、空から放たれた光線により引き離されてしまう。
「…ごめんね。やられちゃった。
これから大変だと思うけど…暫く貴女達二人に任せるね」
「そんなっまだ何か……」
何かを言いかけた黒の少女は、磔にされた優以の泣きそうな、それでいて覚悟を決めた瞳を見て言いかけた言葉を呑み込んだ。
「私達は!何時までもお待ちしております!」
「フハハハハ……呆れたな。そんな状態でまだどうにかできると思ってるのか?」
「ほんとねぇ。まだ無様を晒したいのかしら」
空に浮かぶ、瞳に金の円環が印象的な男女の二人が口元を歪めて磔にされた優以を見下す。
「ふふふっ、勘違いしてるみたいだから言っておくけど…コレがなければあなた達が何人集まろうと私にとっては格下なの」
誰が見ても絶望的な状況でなお、磔にされた優以は笑う。
「白雲、黒雲…お願い。いつかまた、私の元に戻ってきてね」
ーー駄目!また壊しちゃう!!
「世界は崩壊と再生を繰り返す。死した魂は浄化され、この世で再び生を受ける。世界の理は不変。今、ここに私の力と身体を世界に捧げよう。【拒絶】せよ。世界に仇なす神族を、力を」
「【………】」
ボソリと呟かれた最後の一言は聞こえなかった。
磔にされた優以が輝き、大地も、空も、残った建物も、全てが粒子へと変わり始める。
黒の少女は磔にされた優以に向かう敵からの攻撃を宙に浮かぶ黒い円盤で逸らし続け、輝く純白の翼を背に広げた白の少女が空から現れ輝く優以に勢いよく抱き着いたと同時に…世界は色を失う。
自らが世界を壊したという事実だけを残して。
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