ハロウィンの呪文

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モタモタと帰る準備する咲良を俺はそのまま自分の席で待った。 そうすることで咲良の支度が遅くなるのもわかっててやってる。 ガタンっと音が聞こえたほうに顔を向けるとやっと咲良が支度を終えたらしく椅子から立ち上がったところだった。 それを見て立ち上がり、出口に向かって歩き始めた。 短時間で練れる策なんてたかが知れてる。 リリも昨日言ってくれてたら―――? あぁそうか、リリもこの事は予測してなかった。 ……だから咲良に伝言。 そう頭の中で結論付けると少し後ろを歩く咲良を意識しつつ歩みを遅くする。 そしてちょうど横に並んだ時に咲良に向かい呪文を唱える。 「トリック・オア・トリート」 俺の突然の言葉に驚いたのか、それとも横に並ばれたことになのか。咲良が急に歩みを止めた。 もう一度同じ言葉を言うと、今度はアタフタとカバンの中からお菓子の包みを取り出した。 咲良がそうする事も想定済み。 「子供じゃないし。お菓子じゃ、なぁ?」 どういうこと?と言わんばかりの顔で差し出したお菓子の包みを見つめてる咲良。 その包みに巻き付けられたメッセージカード。そこに小さくユーヤくんへと書かれた文字を見つけたから。 それをヒョイと持ち上げて、「ま、今はこれで。」と言ったものの。 ポカンとする顔がかわいくてその頭に手をポンっと乗せると名残惜しく髪に滑らせてから「サンキュ」と言って咲良から離れた。
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