ハロウィンの呪文

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授業が終わると珍しく咲良が席に近づいてきた。 「ユ、…堂地くん」 咲良が苗字呼びするのは初めてで。その衝撃は俺をフリーズさせるのに十分だった。 あまりにも凝視しすぎたのか咲良が不安そうにもう一度呼び掛けてきた。 「あぁ、うん、どうした?」 ……咲良にしてみれば俺の方がどうした、だよな。気を取り直し努めて冷静を保つ。 「あの。リリちゃんがね」 どうやらリリが咲良を家に招待したらしい。というか思いっきり平日に相良家を招待ってどういうことだ? 確かに昨日の夜からリリと母さんが何やらキッチンで仕込んでた。カップケーキだと思い大して気にもしてなかったけど。 「それで、リリちゃんはちょっと用事があるから先にユ、堂地クンと一緒にって」 リリの作ったカップケーキの理由はピンときた。 同時に俺の役目も。 リリも、やるじゃん。 「ふぅーん、わかった」 俺がそう言うと咲良は不安げな顔をパァっと明るくさせ、帰り支度をするために自分の席に戻って行った。 それを見ながらスマホを取り出すとメッセージを送った。 これでとりあえずの時間は確保できた。
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