コール

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「そこ…行ってみる?」 いや、これに出た方が早いんじゃ?って思ったけど、さっきも切ってたヤツだし、何かあるんじゃないかと私は、それに賛同した。 そこへ向かう途中、先輩は一言も喋らない。むしろ、いつもより早歩きだ。 考えている内に312号室のドアの前に着く。 隣に付いているランプが点滅していている。 「あの....」 なんのことか分からずに、先輩を見上げる。 彼女は何も言わず、その部屋に入って行く。 一体なんだっていうの? 後に付いて行って初めて先輩が何も言わない訳に気が付いた。 だってそのベット…誰もいなかったのだから。 むしろ、きれいにベットメーキングされた空きベット。 誰も居ないベッドからコールが鳴っていたのだ。 背筋が凍りつき、ボーッとそれを眺めていると昨日の夜、ここのベッドの方が亡くなったと先輩が教えてくれた。 「びっくりした?たまに、こう言う事が起こるけど…めげないでね?」 彼女はこんな新人に怪奇現象を見せてしまった反省なのか私の事を励ましてくれた。 でも、私にはそれよりも気になる事がある。 「あの…先輩は視える人なんですか?」 そう…同じコールを聞いたって事は…。 「…少しね。そう言うの感じる程度よ。柚木さんは?」 「え?あ…全然!今まで一度も視えたこと無くて…えっと驚いてます。」 苦笑いして誤魔化した。 私は視える事を他人に知られることを恐れていた。 「そう…この仕事はたまにこんな事があるし、視えなくて良かったかもしれないわね。」 少しだけ困った顔で笑う先輩。 一ヶ月後、彼女は病院を去って行った。
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