トイレ

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「おい!聞けって!」 後から追ってくるそいつの言葉なんてもう耳に入れず、コールの点滅するトイレについた。 個室は二つ。 どっちに入ってるか分からない。 「どうしました?大丈夫ですか?」 声をかけるが応答はなかった。 言葉も出ないなんて…意識がなくなったんじゃ?? と思い、直ぐにトイレのドアを二つとも開けるが…そこには誰もいなかった。 確かにコールは鳴っていたのに…一体何処に行ったのだろう。 不思議に思いつつ、もしかしたら具合が悪いけどなんとか自分で部屋かナースステーションまで向かってるのかも… 稀にそう言う事もある。 そう思って出口の方に足を向けた瞬間ーーー 「おい!!やばいぞ!!」 突然あいつが焦った様な大きな声を発したと同時に… バターーン!!!ガチャ!! 大きな音を立てて入口の引き戸が閉まり、内側にある鍵が勝手に横に回わるのがみえた。 「え?嘘でしょ?」 ガチャガチャと取っ手の下にある鍵を「開」の方向に戻そうとするもビクとも動かない。 ガチャガチャ…ガチャガチャ!! 当然、引き戸を引いても鍵がかかっていて開かない。 「ちょっと!もう!!」 何処にぶつけたらいいか分からない怒りを声に出す。 「おいっ!お前…ヤバいぞ?」 全裸のあいつが、見たことのない真剣な顔だった。 「え?」 聞き返した時、肌が無数の細かい針を刺したかの様なにつっぱり、数珠がギリギリと締め付けて来た。 ギラッと明らかに悪意のある視線と共に、部屋の空気がピーンと張り詰められる。 この感覚は今まで何度も味わって来たからわかるよ。 このトイレには…悪霊がいる。
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