第1章

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族長が俺を拾った理由は、俺が10歳になるまで、市民として教育を受けていたから。 貧民の大部分は、何代前の者が貧民に落とされたのか分からない程、昔から貧民だった者ばかりで、字を読むことも書く事も出来ない。 新聞や雑誌を手に入れても、読む事が出来ないので、食い物を煮炊きする火種にするか、新聞紙に包まり暖を取る事にしか使えない。 それが俺という文字を読める者が現れた事で、新聞や雑誌に載っている情報を、いち早く手に入れる事が出来るようになった。 そのお蔭で俺達の一族は、政府が偶に行う貧民狩りの手をすり抜ける事が出来、新しい餌場(ゴミ捨て場)の情報を、隣接する縄張りを持つ者達より早く手に入れる事が出来るようになった。 結果、一族は段々人数が増え、縄張りが広がる。 縄張りが隣接する他の一族の者達が、次々と追従するようになったから。 俺が前の族長に拾われて2~3年経った頃からだろうか、何か大規模な工事が昼夜を問わず行われていて、俺達が住処にしている下水道や古い地下道は、年がら年中振動に見舞われる。 俺は前の族長に止められていたが、その振動に興味を持ち、餌が大量に確保出来た時などにその振動の下に行き、工事の様子を眺めていた。 何の為に行っているかは分からなかったが、巨大なトンネルを地下深くまで掘っているのは分かる。 その工事は十数年続いただろうか?
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