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10 春の舞(続き)
そして、玄関の扉を閉めて振り返ると、
そこには、我が家のソラの少し心配げな姿がある。
亜由里は淡く愛犬に微笑みかけ、そっと柔らかな頭に手を滑らせた。
「大丈夫よ。私の心も晴れているわ」
それからソラと一緒にキッチンに戻り、洗い物を済ませてから
支度にとりかかる。
行く先は、言わずもがなの学校。
しかし、向かうのは校長室。
そして待っているのは、卒業する生徒たちの晴れ姿ではなく、
下される彼女への処分だ。
だが、せめて気持ちだけはお祝いしたい。
だから亜由里は、春らしく淡いピンク色のスーツを選んだ。
ところが、ちょうど支度も整ったという矢先。
いきなり、玄関のベルが高く鳴った。
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