Last Blossom. 過ぎし日の永遠

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 ◇ ◇ ◇  日々の生活なんて、今の俺にとってはただ息をしているだけに過ぎない。  真哉がフランスへと旅立ってから、今年でもう二年目を迎える。ただあいつが帰って来ないだけ、そう何度も思い込もうとしてみたが、上手くいった試しは無かった。  真哉の下宿先である、フランスのホストファミリーから、マンションに一通のエアメールが届いた。けれども俺は、ポストを確認するコトはなく、その存在に気づかぬまま大学へと向かった。  大学が終わると、今度は近場のカフェで黙々とバイトをする。そんなルーティンをこなして、生きる屍のように帰途へと着いた。  マンションのドアをあけると、土間に和哉のスニーカーが脱ぎ捨てられていた。 ――あいつ帰って来たのか?  真哉の訃報が届いた日。俺は和哉にすがりついて、涙も声も枯渇するまで慟哭した。それ以来俺の身を案じ、時折りこうして顔を出しに来るんだ。  食欲不振の俺は、ひとりだと殆ど飯なんて食わねえ。部屋で干からびてねえか、自殺なんてしてねえかって、わざわざ女ん家から俺を監視しにやって来やがる。  でも俺は……  真哉と同じ血の流れた和哉を見るのは、正直言って……辛い。
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