田上くんは屋上少女を救いたい

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ーーーー 学校の屋上って聞くと何を思い浮かべるだろうか。 青春のテンプレートというイメージを持つ人もいれば、単純に危険な場所だと答える人もいるだろう。 だけど、私にとってその場所はたくさんの思い出の詰まった場所だ。もちろん良い意味でも悪い意味でもという注釈は必要になるけれど。 「おかえり。」 とあるマンションの1室。帰ってきたスーツ姿のあの人に私が声をかけると、彼はニコリと笑って 「おうただいま。どうだ、体の調子は。」 そう言って私の体を案じてくれる。 「うんいい感じ。今日も元気に動いてるよ。」 私がそう言うと彼はとびきりの笑顔で私に近づいてきて、お腹に手を当てた。妊娠して最初のころはそんなことはなかったのだけど、ここ最近彼は毎日のように触ってくるようになった。私にとってそれは、さっき不意に思い出してしまった青春の1ページと同じくらいに恥ずかしい気持ちにさせることだったけど、同じくらいにそれは嬉しいことでもあった。 そして、しばらく私のお腹を触って満足したのか、彼は立ち上がって壁にかかっているカレンダーの日付に一つの×マークを入れる。その×マークのすぐ近くに大きく太い字で書かれた「予定日」という文字が目に入る。 「さて、飯作るか。何食べたい?」 「そんな無理しなくても…。私動けないわけじゃないからご飯くらい作れるよ?」 「あほか。早い時期ならともかく今はいつ産まれるかわからない時期なんだからお前は無理すんなって。で、何食べたい?」 意気揚々とワイシャツの袖をまくる彼に思わずきゅんときてしまったのは内緒だ。
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