触れたい想い

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「それって、金髪っぽい頭で、ピアス開けまくってたヤツ?」 「そうそう、その子」 まさかと思い挙げた特徴を、母は声を弾ませ肯定した。 「最初、お友達だって言われた時は驚いちゃったけど、話してみれはすごく利発そうな子で、母さん反省したわよ。外見で判断しちゃダメよね」 「たしかに、直樹とは真逆なタイプだからね。でも、彼はしっかりした青年だから、直樹を任せても心配いらないね」 「そうね。浦上くんが一緒なら安心できるわよね」 両親はウラガミ……克己のことを気に入っているのか、べた褒めする。一度、克己の話題になると、前方の席に座る両親の会話はそれを主軸に盛り上がっていく。俺はすぐ後ろに座っているのに、両親の声がどんどん遠くなっていくように感じていた。 俺の知らないところで直樹は克己を両親に会わせ、ルームシェアの話を進めていた。消えたと思っていた克己は、知らぬ間に家族の中に浸透していた。 じわじわと胸が締め付けられていき、ショックで言葉が出ない。そして、忘れていた胸のざわつきと、あの日感じた疎外感を思い出した。 「…………ごめんね……」 去り際に直樹が告げた言葉を呟く。その言葉の意味が、朧気ながら形になってきたような気がした。
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