運動会

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運動会

どんより重たい雲が夜空を覆う。 「明日は雨降っちゃったりしないかしら?」 子供部屋の窓の外にはてるてる坊主が揺れている。 明日は運動会。 勉強ができなくても、かけっこの得意な息子が唯一ヒーローになれる日だ。 「天気予報で晴れると言ってたでしょ?」 「でも、お月さま出てなかったよ。」 不安そうにつぶやく我が子に母は安心させるように、布団の上からポンポンと優しく叩いた。 「お月様も今夜は眠くて雲のお布団に入っちゃったのよ。大丈夫。心配しないでもう寝なさい。」 それでもまだカーテンごしに窓を気にしている。 「ちゃんと寝ないと元気よく走れないわよ。お母さんに1等賞を見せてくれるんでしょ?」 少年はようやくにっこり笑うと目を閉じた。 そして、母は優しく声をかける。 我が子が明日を笑顔で迎えられるために… 「おやすみ。」
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