ある日曜の昼下がり

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 目を開けると、そこには百円ライターとタバコが一箱置いてあった。  日曜の昼下がり、私は食卓でうたた寝していたようだ。  妻は出掛けているのか、姿が見えない。  なんてタバコがこんな所に? 不思議に思った。  なぜなら、私は結婚と同時にタバコを辞めたからだ。  昔、私のプロポーズに妻は 「タバコを辞めたら結婚してあげる」  と言ったのだった。  そうか…これはあれか、妻のからの三行半と言うやつなのだろうか。  喧嘩することもありはしたが、それでも家庭は上手く言っていると思っていた。  だがそれは独りよがりな幻想だったらしい。  結婚式でも、お前にはもったいない女房だと散々言われたものだ。  彼女は歳を取った今でも綺麗で、それでいて家庭のことはなんでも完璧にこなしていた。  それに比べ、私は腹も出て髪も薄くなってきた。  仕事が忙しいと嘘を言って、休日も家庭を蔑ろにして趣味に出かけることもあった。  今更反省しても、もう遅いのだろうが…  私は、今でも妻が好きだ。  だからこそ好きな道を選ばせてあげたいとも思う。  タバコとライターを掴むと、台所に行き換気扇の下でタバコに火を付けた。    これからどうしよう、家は共働きで頭金を捻出して建てたものだ。  それに息子の事もある、出ていくのは私だろうな。
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