君の名前を呼ばせて

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 目を開けると、そこにはミハイルの起き抜けのぼんやりとした顔がある。 この何ヶ月かの当たり前の朝だ。 自分を包むミハイルの体温がとても心地いいのと、夕べのアルコールがまだ残っている頭のせいで、ベッドから出る気がしない。 ローザはミハイルの胸元に顔を埋めた。 こうしていると、何だかとても安心する。世の中全てが平穏で、まるで子供の時のように何も心配する必要が無いと感じさせてくれる。 だが、それは幻想だ。  今日は上司に呼び出され、久々に仕事に行く。 仕事、と言っても週に数回通っている、バーのウェイトレスのバイトではない。 寝返りをうつローザの背中を、ミハイルは軽く抱いた。 「お早う、ローザ」 そして優しい青い瞳で腕の中の大切な人を見つめた。 「お早う」 「目が覚めたのか?珍しい」 彼の笑顔はとても可愛い。 ミハイルは腕時計を見た。 「まだ7時だ」 そして彼女の髪に緩やかなキスをした。 ローザがアラームが鳴る30分前に目覚めるなんて、本当に珍しい。 起き上がってミハイルを見下ろした。 ほんのりとした笑顔で、手を伸ばしている。 ローザは、その手を無視するかのように、ベッドから降り、ベッド脇にクチャクチャになっている派手でカラフルなガウンを羽織った。 彼女の趣味では無い。 ただ、演じているのだ。「ローザ・ブラウン」という、派手で遊び好きでバカな女を。 「出かけるのか?」 ミハイルは起き上がって、バスルームに向かう彼女の背中を視線で追った。 「ええ、」 彼はそれ以上は何も聞いてこない。 いつもだ。 いつも、ローザが朝帰りをしても何も言わない。 浮気をしているわけでは無いが、時々、そんな素振りを見せてみる。 だが、ミハイルはそれでも何も言わない。
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