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目を開けるとそこには、私を見る数人の顔。
見覚えのない顔の中に、見知った顔を見つけた。
「兄さん…」
その瞳に涙が溢れていた。
奇跡。
この世界には奇跡が溢れている。
俺が十九番隊の隊員に選ばれたことも、そうした奇跡の一つだ。
十九番隊は、ユーラシア連合国軍の軍人なら誰でも憧れる精鋭部隊だ。
たった二十四台しかない最強兵器ヤオヨロズの使用を許可された、たった二十四名の部隊。俺は、そのナンバー二十四番、カグツチの所有者に選ばれた。
敵は人間ではない。
百年前なら荒唐無稽な作り話でしかなかった異星人、ナイトメアだ。
彼らの前には、レールガンも核爆弾も意味を為さない。彼らは空間の歪みから強襲し、人の精神を破壊する。
為すすべを持たなかった人類に救いの手をさしのべたのは、アラミタマと呼ばれる別の異星人だ。
彼らがもたらした二十四台の兵器、それがヤオヨロズだった。
ヤオヨロズは、使用者の精神を空間の歪みに転送する。
つまり、ナイトメアと同じ空間に行くことができる。そして彼らを滅ぼすことができる兵器だった。
俺は、カグツチを使って、多くのナイトメアを葬った。
しかし、ナイトメアたちの攻撃は熾烈を極め、俺は反撃にあって敗北した。
そして、気がつけば病院のベッドの上だったというわけだ。
「良かった、兄さんが無事で」
弟はグイと涙を腕で拭って笑った。
両親のいない俺にとって、弟の唯一人の肉親だ。つまり、弟にすれば俺が唯一人の肉親というわけだ。
「心配かけたな。もう大丈夫だ」
俺が笑うと、弟も笑った。
「良かったよ、兄さん。だって兄さんが死んでしまったら、情報がとれないところだったもの」
「!?」
弟の顔が歪む。
「てこずったが、終わりだ。お前が意識を取り戻した瞬間、解析が終わった。ヤオヨロズは、もはやガラクタだ」
「ナ…ナイトメア…」
俺は絶望した。
「罠にかかったな。嘘だよ。その絶望が必要だったのだ。これでヤオヨロズは、ガラクタだ」
「なっ!?」
俺はがっくりと膝を落とした。
まさか、こんな狡猾な罠を仕掛けていたとは。
俺は絶望した。
ナイトメア。彼らは空間の歪みから強襲して人間の精神を破壊する。
「うなされているな」
「だが、助けてみせる。彼は人類の希望、十九番隊の隊員。そして、僕の兄だから」
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