目を開けるとそこには

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
目を開けるとそこには、私を見る数人の顔。 見覚えのない顔の中に、見知った顔を見つけた。 「兄さん…」 その瞳に涙が溢れていた。 奇跡。 この世界には奇跡が溢れている。 俺が十九番隊の隊員に選ばれたことも、そうした奇跡の一つだ。 十九番隊は、ユーラシア連合国軍の軍人なら誰でも憧れる精鋭部隊だ。 たった二十四台しかない最強兵器ヤオヨロズの使用を許可された、たった二十四名の部隊。俺は、そのナンバー二十四番、カグツチの所有者に選ばれた。 敵は人間ではない。 百年前なら荒唐無稽な作り話でしかなかった異星人、ナイトメアだ。 彼らの前には、レールガンも核爆弾も意味を為さない。彼らは空間の歪みから強襲し、人の精神を破壊する。 為すすべを持たなかった人類に救いの手をさしのべたのは、アラミタマと呼ばれる別の異星人だ。 彼らがもたらした二十四台の兵器、それがヤオヨロズだった。 ヤオヨロズは、使用者の精神を空間の歪みに転送する。 つまり、ナイトメアと同じ空間に行くことができる。そして彼らを滅ぼすことができる兵器だった。 俺は、カグツチを使って、多くのナイトメアを葬った。 しかし、ナイトメアたちの攻撃は熾烈を極め、俺は反撃にあって敗北した。 そして、気がつけば病院のベッドの上だったというわけだ。 「良かった、兄さんが無事で」 弟はグイと涙を腕で拭って笑った。 両親のいない俺にとって、弟の唯一人の肉親だ。つまり、弟にすれば俺が唯一人の肉親というわけだ。 「心配かけたな。もう大丈夫だ」 俺が笑うと、弟も笑った。 「良かったよ、兄さん。だって兄さんが死んでしまったら、情報がとれないところだったもの」 「!?」 弟の顔が歪む。 「てこずったが、終わりだ。お前が意識を取り戻した瞬間、解析が終わった。ヤオヨロズは、もはやガラクタだ」 「ナ…ナイトメア…」 俺は絶望した。 「罠にかかったな。嘘だよ。その絶望が必要だったのだ。これでヤオヨロズは、ガラクタだ」 「なっ!?」 俺はがっくりと膝を落とした。 まさか、こんな狡猾な罠を仕掛けていたとは。 俺は絶望した。 ナイトメア。彼らは空間の歪みから強襲して人間の精神を破壊する。 「うなされているな」 「だが、助けてみせる。彼は人類の希望、十九番隊の隊員。そして、僕の兄だから」
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!