夢の中へ

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ディスカウントショップで武器を探した。 刃渡り30cmの大型ナイフを選んだ。 夢はいつ襲ってくるか分からない。 あの巨大剃刀に対抗するには心許ないが、携帯するにはこれ位が限界だろう。 ボディバッグホルスターも買ってジャケットを羽織れば不自然にならないはずだ。 お金を払うと、店員がレジから巨大剃刀を取り出して斬りかかって来る。 避ける勢いで後ろの棚にぶつかった所で目が覚めた。 気が付くと自分の部屋の椅子から転げ落ちていた。 机の上には大型のナイフ。 買ったのは現実だった。 コンビニで弁当を買い、温めて貰った。 店員がレンジを開けて、手を入れて中の何を取り出そうとしている。 ナイフに手をかけたら、取り出したのは弁当だった。 夢じゃなかった。 道を歩いていると、乳母車を押したお婆さんとすれ違う。 気になって振り返ると、お婆さんが乳母車の中から巨大剃刀を取り出してアイツになって追いかけて来る。 懐のナイフを投げつけるが剃刀で弾かれた所で目を覚ました。 自分の部屋に居た。 懐にはナイフが収められている。 身に着けていれば夢の中に持ち込めるんだと確信した。 投げてしまってはダメだ。次はちゃんと、落ち着いて確実に、この手で刺すんだ。 スクランブル交差点を歩いていると、人混みに紛れたアイツを見付けた。 ナイフを取り出しながら早足で近づいて胸に滑り込ませる。 本で読んだように、刃を横にして肋骨に引っかからない様に気を付けた。 「やった!やってやった!」 アイツが倒れると、またすぐ傍にアイツが立っていた。 ナイフを跳ね上げ喉を掻き斬る。 すぐ傍で悲鳴が起こり、バッグから剃刀を出そうするアイツがいた。 首筋にナイフを突き立てる。 倒れて出た手にはスマホが握られていた。 それから大勢の逃げ惑うアイツ達を追いかける。 男のアイツ、女のアイツ、小さなアイツ、年老いたアイツ、目に映るアイツは片っ端に斬りつけてやった。 十六人のアイツを殺した所で、後ろから数人のアイツに押さえつけられた。 気が付くと、殺したアイツは全員アイツではなかった。押さえているのもアイツじゃあない。 現実だった。
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