そこで

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その霞んだラインが地球の形を象徴していた。 山の上。 私はそれを眺め、途方に暮れた。 私の目の前には男の死体がある。ナイフでクビを後ろから刺されている。もちろん、他殺だろう。 ここには私も含めて男が六人いた。犯人はもう分かっている。あいつだ。あいつはよくこの(殺された)男と口論していた。証拠もある。カメラに映っていた。 この部屋には、そのとき出口は一ヶ所しか残っていなかった。それは、私の頭の三メートル以上も上にある。もちろん、犯人の男が超人だったわけではない。他の誰かと協力したわけでも、ロープやはしごなどという道具を使ったわけでもない。当然だ。 あいつは、周りのものに手を触れることもしなかった。それもカメラに映っていたのだ。 ならば、カメラの映像に細工したのかというと、それはありえない。カメラに、あるいはカメラの映像に、細工の跡などなかった。それもまた、当然だった。 ああ、血だ。この死体から溢れ出る、血。その赤は無数の水玉模様を、いたるところに形作っている。 その後、私は犯人の男を殴った。そうしてどうなるものでもなかったが、私にはそうすることしかできなかった。そいつは泣いていた。泣きながら、奥の壁まで吹っ飛んで行った。 我々は同じ仲間。起こってしまったことは、仕方ない。協力し合わなければ、生きて帰ることもできない。私はこの前代未聞の不祥事を報告して、帰途につく。
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