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今回の治療もそうだが、心臓の精査も彼女は積極的に受けている。
というのも彼女は俺との間に子供を強く欲しているからだ。
彼女の事を思えば、願いを叶えさせてやりたいとも思う。
比奈の子供なら可愛いに違いない。
それがたとえ俺に似ていたとしても…。
だけど、万が一を思うと、それが正しいのか正直迷う。
この件で彼女が頼りにしているのは、当然だが俺ではなく主治医である山内先生で、今回の治療も山内先生がいいタイミングだと言ったから踏み切ったまでだ。
まぁ、確かに俺では専門性に欠けるから仕方ないんだけど、面白くないものは面白くない。
「理人、おかわりいる?」
気付くとスプーンをガジガジと齧っていたようで、それに気付いた比奈が二人だけで話してごめんねというように目配せをしてきた。
おっと、いけない、いけない。
「あぁ、うん。少しだけお願いできる?」
皿を渡しながら笑ってみせると、比奈も安心したような表情になり頷く。
はぁ、ほんと可愛い。
「気に入らない?」
比奈が離れたのを見計らったように、ワインを口にしながら山内先生が問いかけた。
「はい?」
「私が比奈にあれこれ勧める事」
俺の心を見抜いたように的確に指摘され、一瞬言葉に詰まる。
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