24人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
いや…
どこの片隅かも分からぬ程の、真っ暗な場だ。
ピチョン…
ピチョン…
何も見えぬが聞こえてくるのは…微かに水滴が落ちる音。
まるで、洞窟の中で響く音。
それはとても澄んでおり、清らかな音色なのだが、洞窟だろうソコは…恐らく。
現時点、この世で最もドンヨリした空気が充満していた。
ピチョン…
ピチョン…
《………》
「そろそろ灯[あか]りを」
《要らぬ…》
「…出雲では既に神議が」
《分かっておる…》
「それを承知で参られぬと」
《吾[あ=私]とて行きたい》
「ならば参られませ」
《怒られる…》
「…どなたに」
《刀姫[とひめ]にぞ!顔を見せるなと言われておるに、ゆけば必ず…》
「…コトシロヌシ様に怒られるのと、どちらが…など…聞かずもがな」
《されど会いたいのだ…》
「左様で」
《冷たッ!》
「問題は神議であって、そんな事では」
《そんな事だと!?》
「神々が既に参られておられるにも関わらず、御一人だけ御出席なされぬは、決して、許される事では」
《存じているッ》
「なれば、ゆかれませ」
《怒られるッ》
「怒られませ」
《会いたいのだ!》
「会われませ」
《会えぬのだ!》
「人事異動…いいえ。神使異動を願い奉りたく―」
《吾を見捨てるのか!冷たい!冷たいぞ!何故か!》
「面倒」
《一言!?ぐぬぉ~ッ!コトシロの兄並みにハッキリしてるのぅ最近の神使は!》
ジタバタと、何かが暴れる音がしていた。
「不用意に大地を揺るがされますな。今は人間共をお怒りでは無い筈」
《故に神界を揺るがしたぞ!》
「それはそれで逆恨み」
《ぐぬぉお~ッ…もう良いッ!新たなる神使募集をしてやる…そちより優しい優しい…ずっと優し~い!思いやりで出来てるのか!?となり、刀姫も妬く仲になれそうなモノをなッ!》
「では、神使募集の木簡広告、直ちに作成と相成りますが」
《ッ…じょ、上等ぞ!》
「このような場合…更に冷たく冷酷、更に面倒がり、更に失礼でやる氣など皆無な癖に何故、この仕事を選んだ…?といった感じのモノに当たるのが世の常…フ。恐ろしき負の連鎖…」
《吾はそちが恐ろしいぞ…》
「では、出雲は大丈夫と」
《ああ。急ぎ参ろ―…ッすわ!騙されかけたぞ!ゆかぬ!》
「チ…」
《行きたいが駄目なのだ!》
「…辞めたい」
各々、必死…切実である。
そして再び、出雲では―…
最初のコメントを投稿しよう!