阿吽の…神話民話 一巻

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いや… どこの片隅かも分からぬ程の、真っ暗な場だ。 ピチョン… ピチョン… 何も見えぬが聞こえてくるのは…微かに水滴が落ちる音。 まるで、洞窟の中で響く音。 それはとても澄んでおり、清らかな音色なのだが、洞窟だろうソコは…恐らく。 現時点、この世で最もドンヨリした空気が充満していた。 ピチョン… ピチョン… 《………》 「そろそろ灯[あか]りを」 《要らぬ…》 「…出雲では既に神議が」 《分かっておる…》 「それを承知で参られぬと」 《吾[あ=私]とて行きたい》 「ならば参られませ」 《怒られる…》 「…どなたに」 《刀姫[とひめ]にぞ!顔を見せるなと言われておるに、ゆけば必ず…》 「…コトシロヌシ様に怒られるのと、どちらが…など…聞かずもがな」 《されど会いたいのだ…》 「左様で」 《冷たッ!》 「問題は神議であって、そんな事では」 《そんな事だと!?》 「神々が既に参られておられるにも関わらず、御一人だけ御出席なされぬは、決して、許される事では」 《存じているッ》 「なれば、ゆかれませ」 《怒られるッ》 「怒られませ」 《会いたいのだ!》 「会われませ」 《会えぬのだ!》 「人事異動…いいえ。神使異動を願い奉りたく―」 《吾を見捨てるのか!冷たい!冷たいぞ!何故か!》 「面倒」 《一言!?ぐぬぉ~ッ!コトシロの兄並みにハッキリしてるのぅ最近の神使は!》 ジタバタと、何かが暴れる音がしていた。 「不用意に大地を揺るがされますな。今は人間共をお怒りでは無い筈」 《故に神界を揺るがしたぞ!》 「それはそれで逆恨み」 《ぐぬぉお~ッ…もう良いッ!新たなる神使募集をしてやる…そちより優しい優しい…ずっと優し~い!思いやりで出来てるのか!?となり、刀姫も妬く仲になれそうなモノをなッ!》 「では、神使募集の木簡広告、直ちに作成と相成りますが」 《ッ…じょ、上等ぞ!》 「このような場合…更に冷たく冷酷、更に面倒がり、更に失礼でやる氣など皆無な癖に何故、この仕事を選んだ…?といった感じのモノに当たるのが世の常…フ。恐ろしき負の連鎖…」 《吾はそちが恐ろしいぞ…》 「では、出雲は大丈夫と」 《ああ。急ぎ参ろ―…ッすわ!騙されかけたぞ!ゆかぬ!》 「チ…」 《行きたいが駄目なのだ!》 「…辞めたい」 各々、必死…切実である。 そして再び、出雲では―…
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