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大好きな相手の頬の紅色が、僕の頬にも移った。
「千里?」
「隼、せんぱい」
「千里」
「隼先輩、好き。好きだっ」
「うん。僕も好き。大好き」
傘に隠れ、何度も名前を呼び合ううちに、いつの間にか吐息も重なっていた。初めて触れ合う唇はしっとりと優しいタッチを繰り返すうち、いつしか当たり前のように相手を求め、吐息に相手の名を封じ込める。
そこにあるのは、もう離れがたい熱情だけ。
大丈夫。雪が全て覆ってくれる。包んでくれる。僕たちの熱の交換も、密やかな愛しい囁きも。二人の純粋な想いと同じ、光り輝く色。清冽な白銀のカーテンで、そっと隠してくれる。
いつも、振り回されてきた。いろんな『嘘』で何でも塗り固めてしまう後輩、桧山千里に。
果てしなく面倒くさいコイツのことを僕は堪らなく好きで、これからもずっと大好きでいる自信がたっぷりとある。
「隼先輩? 俺、明日も先輩と会いたい」
「うん、僕も。けど、明日は休養日だから、走るのは禁止だぞ」
「えー、マジ? じゃあ、練習はやめる。その代わり、キスなら、してもいい?」
「ふっ。ばかだなぁ。それは許可いらないよ」
「やった! でも、今日のうちに、もう少しキスしたい」
「ん」
あー、これから先もずっと、この可愛い後輩に振り回されていくのかな?
それでも、いいか。だって、すごく楽しい未来しか思い浮かばない。
きっと、ずっと、僕たちの毎日は充実しっぱなしだ!
-side Syun Episode the end.
Continued on the next story.-
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