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目を開けると、そこには明日が死んでいた。
「久しぶりだな空、元気してた?」
いや正確には、それは幼なじみだった明日馬(あすま)の幽霊だ。
癖毛の髪に精悍だけど魅力的な笑顔で、寝ている私を見下ろしている。
「……あんた幽霊のくせに元気はないでしょう」
「空は相変わらず口が悪いな」明日馬が白い歯を見せる。
「ってか、あんたいつの間に幽霊になったのよ?」
驚くよりもジンジンと怒りが込み上げてきた。
「昨日さ。それでどうにも弱ってな。そーいえば空は昔から霊感強かったと思い出して、それでお前のところに来た」
「何がそれでよ。あ~迷惑だから浮遊霊なんてウザイ」
「それよりもお前、人の話を聞くときは寝てないで起きろ」
「何さあんた、レディの部屋に不法侵入している男の言うことなのそれが?」
私は布団のなかで地団駄を踏んだ。たちまち周りの本やペットボトルが転がる。
それを明日馬が困り顔で眺めていた。女の癖にダラシナイと顔に書いてある。
──私こと雨宮 空(あめみや そら)の幼なじみである、この迷惑千万な幽霊の虹野明日馬(にじのあすま)は昔からそうだった。
正義感が強く曲がったことが大嫌いな男なのだ。いわゆる熱血バカ。
小学校から高校まで一緒だったが、その性格ゆえに福祉を専攻する大学に行ったことまでは憶えている。
それが何を血迷って、ニート乙女である私の部屋に参上つかまつったのだろうか。
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