エピローグ④《桜木真司&水瀬レイナ》

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「今はそれくらいしかできないからな。だけど、大人になったら、色んな国を見て回りたいと思ってる。世界情勢や環境問題、そして、色んな人達の暮らしや思想に触れて、どうすれば戦争や飢餓で苦しむ人を減らせるか。将来、少しでも地球の役に立てることをしていきたいんだ」 熱く語りながら、真司は何気なく空を見上げた。実はあれから、ふと思うことがある。 果たして、二つの星を巻き込んだ今回の騒動は、本当に偶然起こったものだったのだろうか? いくら宇宙が広大と言えど、美代奈とそっくりな人間や、地球と似たような惑星がそんな都合よく存在するはずがない。又、沙久耶も『嘘』とは『人を思いやる心』だというふうに例えていたではないか。 あれは、一種の平行世界(パラレルワールド)。自然よりも科学を優先し、人を思いやる心を忘れてしまった人類の成れの果て。それが、あの『高度な文明を持ち、嘘という概念がない星』の正体ではないだろうか。 もしかすると、あれは地球が鳴らした警鐘だったのかもしれない。 このまま人類が科学に現を抜かし、人を思いやれなくなれば、やがて倫理観は薄れていく。つまり、それは他人の迷惑を顧みず、己の本能に()()に生きていくということだ。 そうなれば、それはもはや人ではなく獣だ。理性を失った獣に、嘘をつけるほどの器用さはない。こうして、地球も嘘を忘れ、No.347の星と同じ道を辿るというメッセージ。 そういう意味では、童話のピノキオとは逆で、彼女たちは嘘を知ったことにより、人間らしくなれたのかもしれない。人間は嘘をつけるからこそ空気が読める(人を思いやれる)生き物なのだから。 そして、今回の出来事を通して、俺達は地球の意思を子々孫々に伝えていく義務がある。もう二度とあんな悲劇を生まないために……。 そんなことを考えながら歩いていると、周りの景色にやたらと草木が混じり始めてきたことに気がついた。どうやら、目的地に近づいてきたらしい。
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