エピローグ④《桜木真司&水瀬レイナ》

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「あっ、見えた!あともう少しだよ!」 レイナがはしゃいだ声を出すと、真司の腕を無邪気に引っ張る。真司は引っ張られるままに、緩い上り坂をのぼっていく。やがて、細い道から視界が開けた場所に出た。 「うわぁ、綺麗」 開口一番で、レイナが感嘆の声を漏らす。そこには、視界を埋め尽くさんばかりの桜が咲き誇り、幻想的な空間を作り出していた。半年前まで、この場所に大きなクレーターが空いていたとはとても思えない。ここは、五年前に宇宙船が墜落した山である。 「すげえな。今まで見た桜の中で一番綺麗かも」 真司も思わず、その光景に見入ってしまう。紗久耶曰く、『私達がいた痕跡を全て消さないといけないので、あのクレーターも直しておきますね。隕石が降ったという記憶も、地球人の記憶から消しておきますのでご心配なく』とのことだ。まったく、つくづく彼女達の恐ろしさを思い知らされるばかりだ。 「おーい!二人ともおっせーぞ!先に始めちゃってるからな!」 少し離れた場所から達也の声が飛んでくる。見ると、そこにいるのは達也だけではない。茜や美代奈、それに正人や、第4ゲームで一緒だったプレイヤー、他にも見覚えのある顔がたくさん揃っている。皆、小学生時代の同級生だ。 「悪い!話しながら歩いてたら遅くなっちゃって」 手を振りながら、真司とレイナは駆け足でみんなのもとへと向かう。実は、この日のために、真司がみんなに呼びかけたのだ。五年前、宇宙船が墜落して叶わなかったピクニックの続きをするために……。
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