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「そんな事ないよ、レナちゃん。平和な世の中は出来るよ」
さっきまで泣きじゃくっていたサクラは、いつもの元気を取り戻して話し出す。それに対し、ちょっとだけ意地悪な質問をするトウマ。
「ほう……お前には、平和な国の作り方が分かるとでも言うのか?」
「簡単だよ。私の考える人が二人いればいいんだよ」
「二人?」
兵士達は興味津々で、トウマとサクラの会話に聞き耳をたてる。
「優しい王様と、すっごく頭のいい人! 頭のいい人は、争いは無い方がいいって事を、みんなへ上手に教えるの。それでね、国を一つにしちゃえばいいよ。王様は優しいし、平和な国の出来上がり」
向日葵の様に真っ直ぐなサクラを見て、落ち込んでいたレナに笑顔が戻る。
「凄い! サクラちゃんは天才だねっ」
レナは目を輝かせながら、尊敬の眼差しで見つめた。サクラが照れ臭そうに微笑むと、納得のいかないトウマが横槍を入れる。
「そんな簡単に行くか! 争いを無くす様に教えるって……第一、国を一つにするのはどうやるんだ?」
思っていた以上に真面な意見を言われ、五歳児にむきになるトウマ。
「だから、頭のいい人がやるんだよ」
「えっと……そうじゃなくて……具体的に……」
言葉に詰まり、それを見ていたセキが、大きな笑い声を上げた。
「ハッハッハッ! サクラ殿も軍師の一族としての才覚が見られる。こりゃ一本取られましたな、トウマ殿」
「こんなの幻想ですよ」
必死な反論を遮り、嬉しそうにツバキが続く。
「いいじゃないか。その考え、私は好きだな。幻想国を作ってやりなよ。軍師の一族だろ?」
「ツバキさんまで……」
清々しい性格が見て取れるツバキに合わせ、ドモンも笑顔で口を開いた。
「確信をついていますな」
「もう、ドモンさん……あっ! フドウさんまで笑ってる!?」
必死に笑いをこらえるフドウを見て、全員が声を大にして笑う。
その時、上空から強い風が舞い込み、一斉に花びらが舞い上がった。
桜吹雪に包まれ、その幻想的な情景に心を奪われる。
くるくると舞い踊る花びらは、やがてレナとサクラを優しく包み込んだ。まるで、二人の進むべき未来を祝福するかの様に……
「幻想国……か……」
不思議な感情を胸に秘め、トウマは頬を緩ませた。
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