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「……っく……」
ある村の外れにある森の中で少女は泣いていた。
何時間泣いたか分からないぐらい、
涙が枯れ果てていた。
「……っく……
お父さん……お父さん……っ!」
「――まだ泣いてんのか」
少女は振り向くと
少年が立っていた。
少年はそっと少女の隣に座る。
切り株の上は冷たい。
「……」
「いずれ戻って来るだろ」
「……そう思う?」
「……さぁな」
やれやれ、と言った表情の少年に対して少女は呆れ気味に切り株の上から離れた。
「もういいよっあたし村に戻る」
「――じゃあな」
少年もまた切り株の上から離れた。
少女が振り返るともう少年の姿はなかった。
少女は何も思わなかった。
少年とはいつでも逢えるのだ、と信じて疑わなかったのだ。
「……もう泣いちゃだめだね、あたし」
少年の言葉を受け止めて、少女は村へと戻る。
――それっきり、少年とは会えなかった。
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