枝垂れ桜

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 ああ、そうか。  僕は大きく頷き、「ありがとう」と二人に微笑むと、満開の桜に向かって、ゆっくりと歩み寄っていった。  幹肌にそっと手を触れると、とくん、とくんと、温かな音が僕の全身へ伝わってきて、僕の身体は透明になっていく。  僕は目を閉じ、桜に全てを委ねた。  失くしものの花びらたちが、僕を包み、甘く香る。
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