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直哉が俺のミリタリーコートのジッパーを下ろしながらいった。
「ねえ、今日は同じベッドで寝てくれるよね」
コートを脱がされてしまう。俺は頭のてっぺんから火が吹いたみたいになった。恥ずかしくて、体が固まってしまう。なんとか顎だけで小さくうなずくと、直哉が自分ダッフルコートを脱ぎながら平然といった。
「じゃ、健人がパンイチね」
俺はぎょっとした。
「ちょっと待てよ、なんで俺がパンイチなんだよ」
「だってぼくは、恥ずかしいから、健人がパンイチになればいいと思うよ」
「そんなの、俺だってハズいわ!」
「でもどっちかがパンイチにならないと、ぼくは、タケルに負けたことになる」
「ちょ!勝ち負けの問題かよ!もうタケルのことは忘れろって!」
「嫌だ。ぼくはあの時のこと、絶対に忘れないから」
俺の恋人は、以外と焼きもち焼きで、随分執念深かいようだった。だけど俺はちょっとほっとした。あのままシリアスな雰囲気でベッドに突入してたら、気が動転して気を失ってたかもしれない。だってキスだけで腰砕けになってしまうし、頭の中は真っ白で緊張しまくってたんだから。あのときに見た夢の中のような冷静さなんて、本当の俺にはまったくなかったのだ。
そのあと、どちらがパンイチになったのかは内緒。二人ともなったかもしれないし、二人ともならなかったかもしれないし、それはご想像にお任せ。
その後、同じベッドで眠って、二人一緒に幸せな朝を迎えたことには変わりないのだから。
これからも俺たちはずっと一緒だ。ずっと。
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