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「そっ、そんなの……勝手すぎますよ……っ!」
「……ああ、そうだな」
「ずっと迷惑がってたのに、最初なんて無視ばっかりするし、私のこと変人女とかっ……!」
「仕方ねーだろ、あの時は本当にそう思ってたんだよ」
ヒロ先輩は私の言葉ひとつひとつに答えながら、ゆっくり一歩ずつ私に近づいてくる。
「なのに時々すっごく優しくするし、ドキドキさせて……っ! 自分のこと好きなところが、好きって言って……」
「…………」
「でも、その好きを、私の気持ちを最終的にヒロ先輩はわからないって……!」
「……バカだったんだよ、俺も」
「私がどんな気持ちで会いに行ったかも、会いに行かなかったのかも知らないのに、許さないなんてひど」
言っている途中で、ヒロ先輩の腕に閉じ込められる。
「俺も、初めてだった。こんなに誰かが追いかけてくれたのも、誰かに対して特別な感情を持ったのも……それが、愛だとか、恋だとかなんて、俺はそうやって考えることから逃げて、お前からも逃げた」
初めて聞く、ヒロ先輩の気持ち。
今まで私も知らなかった、ヒロ先輩の本音だ。
「……バレンタインの日、お前が俺に会いに来て、あんなことされて、趣味悪いチョコ渡されて……ビックリしたけど――俺は、嬉しかった」
「……ヒロ先輩」
「ファーストキス捧げてやったなんてドヤりやがって、俺もだよバカ」
ヒロ瀬先輩は照れているのか、顔を見られないように、強く私を自分の胸に押し付ける。
ヒロ先輩も、初めてのキス……だったんだ。
「……ヒロ先輩」
「あ? まだ俺の話してる最中だろ」
「そうなんですけど、久しぶりのヒロ先輩になんだかぶわぁって感情が溢れだして止まりません。 今すぐ言いたいです」
「……なんだよ」
ヒロ先輩は抱き締める腕を緩めてくれて、私は顔を上げてヒロ先輩を見つめる。
「初めてここで、名前も知らないヒロ先輩を見たときから、ずっとずっと、先輩が好きです」
「……!」
「私が今までしてこなかった全部の青春を、ヒロ先輩に捧げました」
私は、ヒロ先輩という青春をこの一年間ずっと追いかけてきたんだ。
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