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今のホーは、金には困っていないが、表情は疲れていた。
「ホー。どうしたの?」
俺が立ち上がって、ホーの一升瓶を押さえると、ホーはワインに手を伸ばしていた。
「生産が間に合わない」
左々一人の発情期では、間に合わないということか。
「俺はこう見えて、儲けよりも楽しければそれでいい」
昔から、ホーは商売では無理をしなかった。何に対しても、深追いしないので、ホーは見通しもも確かであった。商売以外にも投資して、俺も助けてくれている。確かに、楽しい事というのが、ホーのモットーであったような気がする。
「ホー、飲み過ぎ」
ワインも奪うと、俺はホーの手を押さえた。ホーは俺の手を握ると、自分の頬に当てる。
「酒を止めてくれるのも、弘武だけになったな」
ホーの沢山の彼女は、酒を止めないのか。
「左々だけでは生産が追い付かない。親父に新しい試験体を作れと言われて、日本には来たけど、やる気が起きない」
ホーが、畳に寝転ぶ。腕を掴まれたままであったので、俺まで巻き添えで寝転んでしまった。
「この実験、動物になった子供もいた。その写真を見て、やる気が激減」
トリプルで、人間になれなかった例もある。ふと春留を見ると、春留は俺から目を逸らしていた。
「発情期の大量生産をした方が早いとか」
「左々は安価だからな。実験の意味が出ない」
左々は体液、汗からも発情期の成分が出る。その一滴で、人間は三日ほど発情期になる。左々に汗をかかせるだけで、かなりの金になっていた。
「いつもならば、左々を親父に渡して、自分はサヨナラするのだけど、弘武が怖い」
じっとホーが俺をみる。
「弘武が、俺を嫌いになるのが怖い。弘武に頼られると嬉しい」
俺がホーを困らせているのか。でも、左々を見放せば、俺は怒る。
ホーは俺の手を握り締めていた。ホーは、育ちがいいせいか、けっこう上品な物腰をしている。
「ホー……」
ホーの黒目が、くっきりとしていて、俺は目を逸らせなかった。こんなに、ホーは暗い目をしていたのだろうか。
じっくり話したい所であったが、ポケットに入れていた携帯電話が鳴り続けていた。佳親であるのかと、着信を見ると、藤原であった。
「藤原、どうしたの?」
「弘武、どうしたではないでしょ。佳親さんが怒って、家に来ている」
藤原には関係がないのではないのか。
「佳親に代わって……」
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