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伝わるだろうか。
ねえ、伝わっている?葉月ちゃん。
俺はいま、すごくしあわせなんだ。
もう、葉月ちゃんと康平を苦しめたりしないから。
悲しませたりしないから。
だから。
安心してほしい。
空を見上げ、大空を仰いだ。
手を翳し、照りつける太陽を見つめ、智紘はそっと微笑んだ。
「・・・・帰るか」
同じように太陽を見つめていた真人が、視線を落とし、智紘の手をとった。
指を絡め、きつく握られる。
笑いながら、その手を強く握り返した。
離れたくないから。
離したくないから。
この手を。
ずっと掴んでいたいから。
歩きながら、もう一度、空を見上げた。
降り注ぐ眩しい光。
眼に映るものすべてが、キラキラと輝いて見えた。
夏は永遠に、廻ってくる。
灼熱の太陽と、強い日差し。
うんざりするような日々に悩まされるだろうけど・・・・。
それでも、やっぱり嫌いになれない理由がある。
夏は葉月の季節で。
夏は自分の季節だ。
だから、きっと・・・・。
ねえ?葉月ちゃん。
光の隙間で、葉月が華やかに微笑んだ。
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