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 寛治は無事だった。ついでに私も死ぬことはなかった。  私より怪我の軽かった寛治が病室に見舞いに来て、そんな彼の顔を眺めている時、初めて寛治の未来を見てしまった。  ずっと避けていた寛治の未来。そこには私の納得するものが映っていた。  小学生向けくらいの男の子が、公園でサッカーボールを追っかけている。自動車学校の映画でよく見せられる典型的なシチュエーション。サッカーボールは公園から道路に出てしまう。入り口付近にはトラック。寛治はそこから50メートルほど離れた場所を歩いていた。  男の子が道路の真ん中まで出てきてしまった時には、紺色のセダンが男の子のすぐ目前まで迫ってきていた。  甲高いタイヤのスキール音。セダンは数メートルほど進んだ後、停車した。衝突音は聞こえなかった。ドライバーが車から降りてくる。確かに目の前に飛び出してきたはずの男の子の姿を探した。
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