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「お父さん楽しかったね」
「そうだね。
しかし、何時も僕の作品に面白いレビューをくれる人が、あんなに若い学生さんだったとは思わなかったな。
本当に来て良かった」
日帰り旅行で東京に出て来た私達家族は、投稿小説サイトが行ったコンテストで上位に入賞した作品を、製本して売り出したフリマに立ち寄り、売り子をしていたサイト上で知り合った人達と交流して来たところである。
歩いている私の背後から、突然声をかけられる。
「くたばれ」
え!?後ろを振り向こうとした私の背中に、鋭い痛みが走る。
鋭い痛みが背中に走ると共に全身の力が抜け、痛みの為目をギュッと瞑り路上に倒れ込む。
路上に倒れ込んだ後、誰かに身体を支えられる。
私がギュッと瞑っていた目を開けると、そこには私にすがりつき泣き叫ぶ妻と娘、それにフリマで知り合った人達や見知らぬ人達が、私に声をかけていた。
「お父さん――」
「あなた! しっかりして」
「今、救急車を呼んだからな!」
「しっかりしろ!」
「奥さん! 旦那さんに声をかけ続けて」
「目を瞑るな! 意識を保て!」
「頑張れ!」
遠くの方から、救急車のピーポーピーポーというサイレンの音が聞こえて来ていて、その音が段々と近寄って来るのがわかる。
救急車のサイレンを耳にして私は家族に声をかけようとしたが、喉から出て来たのは血だった。
「ゴボォ、ガハッ、ハア、ハア、ゲホ、ハア、ハア」
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