北極星も眠る夜に

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人気のない雑木林で穴を掘っていた。 木々の根っこが邪魔をするが、勢いをつけてスコップを突き立て、ぶちぶちと千切っているうちに、先端の通りは良くなった。 そこからは足をかけてスコップを埋め、土をすくうことの繰り返し。 湿った土の匂いがした。 時刻は、日付が変わろうしている頃だろう。 明かりをつけるわけにはいかないので、月光と、遠くから届く街の灯だけが光源だ。 作業に没頭するうちに、気が付けば一メートル半ほどの深さの穴が出来ていた。 「これぐらいあればいいか」 独り言が口を吐く。 光の届かない穴の中は真っ暗だ。自分の足さえ見えない。 だが広さも申し分ないはずだ。 スコップを外に放り出してから、自分も穴から出た。 あらためて、地面に横たわったシンの顔を見る。 柔らかいブロンドの猫っ毛が夜風に揺れていた。 大きな目は静かに閉じられている。 まるで眠っているよう。だが小さな鼻と口の周りには黒っぽい血が付いている。 黒々と固まった血は、セーターの腹部も大きく汚していた。 シンの目は二度と開かれることはない。 オレはその小さな体を抱き上げた。穴のふちまで移動させる。 自分が先に穴に入り、シンを抱き下ろす。 時間はあまりないが、穴の中に蹴り落とす気にはなれなかった。 そこで人の声が聞こえた。 複数だ。大人の声も混じっている。 カンテラの白い明かりが近付いてくる。
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