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 目を開けると、そこにはもうひとりの自分がいた。  ドレッサーの前に座り、ブラシで長い髪をとく。背後に置いた姿見に反射して、鏡の中には何人もの自分がいた。その中に、髪をとかしながらもその動作をあらがうような自分がひとりいるように見える。  この世には、自分と似た人間があとふたりいると聞いたことがある。合わせ鏡なんて不吉なことをするようになったのも、自分とよく似た人間と会いたいと思ったからだった。  そのうちのひとりをわたしは生まれた時から知っている。いや、出会いはもっと前で、母親のおなかの中にいた時からずっと一緒だった。ひとつの子宮の中で、わたしと妹は一卵性双生児としてこの世に生を受けたのである。  産院ではどの赤ん坊にも足にタグを付けられていたというが、わたしたちふたりにとっても自分が自分であるためのお守りのようなものだった。生まれた瞬間からわたしはわたしで、妹は妹。他の誰でもありたくはなかった。  同じ遺伝子を持つわたしたち。おんなじだけの時間を歩いてきた。だけども年を経るにつれ、わたしたちはなにからなにまで同じというわけにはいかなかった。  おっとりとして優柔不断なわたしと、社交的で明るい性格の妹。  ふたりで共有していた服も、物心つく頃には妹は嫌がって、母親が選ぶ服も、わたしが選ぶ服も着なくなり、妹はわたしとは違う服を着るようになった。妹はわたしと双子であることを極端に嫌い、わたしの真似は決してしなかった。  双子特有のシンパシーなのか、同時に同じことを考えてしまうこともあったが、そうなると妹は即座に打ち消した。
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