ほしのたね10号の試し読みです。

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燻っている靴 並んでいる足 ショーウィンドーにソックスが並び出すと ぼくはそわそわしてしまう 燻っている靴 並んでいる足 あのマネキンたちの足が あたかも血の通った少女の足のように 生々しく見えるのだ 燻っている靴 並んでいる足 燻っている靴 靴は燻るものだと思う 日々に疲れはて 自分の心が燻っていると 靴も連鎖反応を起こして燻る 足と心は密接に関係している 並んでいる足 それが少女のものなら……。 (爪先から太ももにかけて なぞっていく、 なぞっていく、 まろやかな曲線……) 素晴らしい 素晴らしく健康な肉体! 並んでいる足、足、足 (血を、 失った、 足、 足、 靴、 足) 思いだす (あの頃、君はまだ幼かったね) 振り向く仄白い面影 懐かしいチュールスカート 「ウェディングドレスみたいでしょ」 と笑う君を (顔ではなく) その足を 今でもぼくは 覚えている 覚えている 君のスカートの中に入れた秘密は ぼくしか 知らない
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