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前の職場から異動して二年目の初夏、とある土曜の正午前。
仕事を全て終えて帰ろうとしていたところで、部署の先輩に呼び止められた。
「多賀!お前も仕事終わったんなら、メシ行こうぜ」
「あ、すいません。ちょっと予定が入ってるので。また今度誘って下さい」
「何だよ、万年暇人の多賀が用事とか怪しいわー」
探るような視線を浴びて居心地が悪い。
たとえ職場の先輩からの誘いでも、今日だけは譲れなかった。
「実は、彼女がこっちに来てくれてるんですよ。俺の家で昼飯作って、待ってくれているんで」
「うわ、惚気かよ!例の遠距離の彼女だろ。くっそ、リア充羨ましいわー」
一人盛り上がる先輩に対し、愛想笑いを浮かべて誤魔化す。適当なところで話を切り上げて署を出た。
ここから官舎までは徒歩で十五分程度。
家で待っている奴がいると思うと、自然に歩調が速まっていた。
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