DV

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「なあ、お前また殴られたんじゃないのか? 歩き方がおかしいよ」 「あはは。殴られたんじゃなくて蹴られちゃったんだ」 「マジであの家出ろよ。いつか殺されるぞ」 「うーん。分かってるんだけどアキト君置いて出て行けないよ。私があの家に来てから、パパにぶたれなくなったってアキト君言うんだもん」 「いくら子どもに懐かれてるからって、自分が痛い目みる必要ないだろ?」 「でも、アキト君が、排水溝に落ちて、びしょ濡れになってた私を助けてくれなかったら、あの時に私死んでるし。最近はよけるのも逃げるのも大分上手くなったし、大丈夫だよ」 「バカ! 俺たちは繋がれてアホヅラぶっこいて芸まで仕込まれる犬と違って一宿一飯の恩とか感じる必要ないんだよ!!」 「ネネ! ネネ! どこなの? ネネ!」 小学校低学年くらいの男の子が悲痛な表情を浮かべ泣きながら叫んでいる。 夕暮れ時の駐車場の塀の上にいた二匹の猫達は一匹は男の子とは反対の方に飛び降り、もう一匹は男の子の方へ飛び降りて彼の足元にすり寄り喉を鳴らした。 「ネネ、ゴメンね。パパが……。ネネ痛かったよね」 ネネと呼ばれた猫は男の子に抱き上げられると、益々喉を鳴らして短く「ミャア」と鳴いた。 ボス猫のヒデキチは何か難しい事言ってたな。『いっしゅくいっぱんのおん』ってなんだろ? よく分からないけど、私がずっとアキト君と一緒にいたいだけなんだ。 「パパまたどこかに出かけちゃったからもう大丈夫だよ。お家かえろ」 すっかり日が落ちて暗くなった駐車場からアキトはネネをぎゅうっと抱いて家に向って走り出した。 ヒデキチはあんな事、これからも言うかもしれないけど、私はアキト君の側にいるのが一番幸せだよ。 ネネはまた短く「ミャア」と鳴いた。 薄暗い道を駆け抜ける、一人と一匹を励ますかのように、外灯が一斉に灯り始めた。 .
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