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だからといって、家で誰かが待ってくれてるわけでもなく。
半年前に同棲してた彼女と別れてからは、寂しく一人暮らし・・・いや・・・いや、いや、俺には仕事がある。
「酒井、ほら、あっちの女性グループのところへ行って挨拶してこい。あそこは総務グループの女性たちだから。」
そう言って、俺の背中を押した後、野々村部長は先方の人事部の部長らしき方と何か話し込んでいる。
俺だって、部長の仕事をそばで見たいと思ってたのに。
野々村部長は、うちの営業部でもちょっとした伝説の人で、20代では営業のトップ、30代になってすぐに部長になった人で、俺もすごく尊敬している人。
だからこそ、一緒に営業に行く機会に恵まれたのなら、そのコツを盗み見たいと思うだろう?
しかし、上司命令とあれば断るわけにもいかず、俺はパーティ会場に入った時に受け取ったグラスを持ちながら、女性たちに近づいた。
「お疲れ様です。」
にこやかに挨拶に向かった総務グループには、うちの派遣の子が二人入っていた。
その二人とは、あまり面識はなかったはずなんだけれど。
「あ、酒井さん!」
「あれ、井上さんは?」
いきなり名前を呼ばれて驚いた。
「すみません、井上は体調を崩してまして・・・私が代打で、すみません。」
「そんなことないです!」
「そうですよ、酒井さん担当してもらってた子とかから、お話聞いてたし。」
どんな話をしてたのか、すんごく気になったけど、まずは総務グループのグループ長の方にご挨拶を、と、彼女たちとの話はそこそこに、グループ長を紹介していただく。
「いつもお世話になっております。」
「いえいえ、こちらこそ」
名刺を交換していただきながら、派遣の子たちの様子を伺いながら、パーティ会場を見渡した。
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