iNG.5

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「試しに呼んでみてよ?」 「え!?」 「早く」 こちらを見ながら気持ちが悪いくらいニヤニヤし続ける神島仁。 確かに今日、どこかで呼ばなきゃいけないかもしれないけどさ……何で今なわけ!? 「今言う必要は無いじゃないですか。しっかり前見て運転して下さい」 言いたくない私はそっぽを向いて口を尖らせる。 「俺、帰っちゃうよ?彼氏のフリしてやんないよ?」 「え」 今度は神島仁が口を尖らせながら呟く。 「そしたら麻耶がまた煩いだろうなぁ~……アイツ、本当に面倒臭いからなぁ~……」 本当に腹立つ。 そんな言い方して私に言わそうとするなんて。 「…………………………………………………仁、さん」 私は窓の方を向いて小さな声で嫌々呟いた。 「『さん』は要らないし、声も小さいし。それにこっち向いてないから誰を呼んでるのかわからないな。あぁ、そうか。これはきっと俺のことを呼んだわけじゃないなんだな。きっとそうだな」 神島仁はわざとらしく言ってみせた。 更に腹が立った私はそんな神島仁へと勢いよく顔を向けた。 「仁!これで良いですか!?満足ですか!?」 「あぁ。大満足」 私がやけっぱちで大声で返すと、神島仁はやっと満足そうに微笑んだ。 生まれて初めて男の人を呼び捨てで呼んだよ……。 私は暫く顔の熱が引かなかった。
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