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「試しに呼んでみてよ?」
「え!?」
「早く」
こちらを見ながら気持ちが悪いくらいニヤニヤし続ける神島仁。
確かに今日、どこかで呼ばなきゃいけないかもしれないけどさ……何で今なわけ!?
「今言う必要は無いじゃないですか。しっかり前見て運転して下さい」
言いたくない私はそっぽを向いて口を尖らせる。
「俺、帰っちゃうよ?彼氏のフリしてやんないよ?」
「え」
今度は神島仁が口を尖らせながら呟く。
「そしたら麻耶がまた煩いだろうなぁ~……アイツ、本当に面倒臭いからなぁ~……」
本当に腹立つ。
そんな言い方して私に言わそうとするなんて。
「…………………………………………………仁、さん」
私は窓の方を向いて小さな声で嫌々呟いた。
「『さん』は要らないし、声も小さいし。それにこっち向いてないから誰を呼んでるのかわからないな。あぁ、そうか。これはきっと俺のことを呼んだわけじゃないなんだな。きっとそうだな」
神島仁はわざとらしく言ってみせた。
更に腹が立った私はそんな神島仁へと勢いよく顔を向けた。
「仁!これで良いですか!?満足ですか!?」
「あぁ。大満足」
私がやけっぱちで大声で返すと、神島仁はやっと満足そうに微笑んだ。
生まれて初めて男の人を呼び捨てで呼んだよ……。
私は暫く顔の熱が引かなかった。
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