24人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
目を開けると、そこには
私の顔を覗き込む、一人の若い女の顔が有った。
「おわっ!」
目を覚ました私は、思わずビックリしてソファーから跳ね起きた!
「な、何で!ここにいるんだ?!」
咄嗟に頭に浮かんだ疑問を口にする。
「き、君は確か、仕事を終えて、さっき帰宅したはずじゃ…」
「課長!せっかく心配してあげたのに、そんな言い方って無いんじゃないですかぁ?もうっ!」
彼女が口を尖らせた。
「帰る途中でロッカーにスマホ忘れたのに気付いて会社に戻って来たんですよぉ!そしたら、こんな遅い時間なのに応接室の明かりが点いてるものだから、ちょっと気になって」
ここは、会社の応接室。
私の顔を覗き込んでいたのは、部下の立花君である。
腕時計を見ると、夜の九時になっていた。
「そ、そうだったのか!
それは済まなかったね。いやぁ、残業してる最中に急に眠くなっちゃってさぁ。スマンスマン」
と、私は頭をかきながら彼女に詫びた。
今夜…
私は、会社に一人居残って帳簿のチェックなどをしていたのだ。
で…そうこうしているうちに、急に睡魔に襲われ、ほんの仮眠のつもりで応接室のソファーに横になったのは良いが…
いつの間にやら、本格的に眠ってしまったようだ。
「もう、課長ったら!
こんな所で寝てたら、風邪ひきますよ!素敵な奥さんに心配かけちゃダメじゃないですか!」
やれやれ…。
私の妻…恵美子は、私が言うのも何だが、確かに素敵な女性だ。
彼女は、いつも夫の私を立ててくれるし、家事も毎日きっちりやってくれる。
私にとっては、もったいないくらいの妻である。
私と妻がラブラブだと言う事は、会社内でも結構有名みたいだ。
「いや…実は今夜、恵美子はウチにいないんだよ」
と、私は肩をすくめて見せた。
「あ…。
もしかして、例のご旅行ですか?」
立花君が興味津々な様子で言った。
最初のコメントを投稿しよう!