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「……うん」
美月ちゃんは銀二さんの手をゆっくりとほどき、さつきさんの手を握った。
繋いだ手を引っ張って、ぱたぱたと駆け出す美月ちゃん。早いよ、なんて楽しげな声が、少しずつ遠くなっていく。
さつきさんは終始優しげな表情で、美月ちゃんを眺めていた。微笑ましいって思っているんだ、きっと。
「さて。無事解決したっつーことで、マフラーだけ確認したら俺も帰るわ」
火鷹さんがその場で立ち上がり、一つ伸びをする。
「そうか。次来るのはいつ頃になる?」
「んー、兄貴が来たいって言ったら俺も来ようかな。あと、来月は視察の帰りに寄りたいから、豆腐ハンバーグでよろしく」
「お前……。まあいいけど、紺屋を連れてくるなら予め言えよ」
心底めんどくさそうな顔をして、銀二さんが言った。果たして豆腐ハンバーグとはそんなに面倒な料理だっただろうか。
豆腐ハンバーグといえば、小学校の給食によく出ていた記憶がある。ちなみに俺は、結構好きなメニューだった。
他に、何かあっただろうか。給食で特別おいしかったメニュー。
「夜彦は?なんか、好物とかねえのかよ」
「えっ?」
唐突に話を振られて、思わず言葉に詰まってしまう。それも、今まさに考えていたような内容だったので尚更だ。
(好物……か……)
記憶に残っているのは、父さんと食べた天ぷら蕎麦。じゃあ、今までで一番おいしかったものは?
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