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「瀬川さんは悪くありません。
心配して下さったのに私が…本当にすみませんでした」
彼女は悲痛そうに声を震わせた。
そんな顔をさせたかったわけじゃないのに。
先ほど彼女が顔を上げたとき、全身に衝撃が走ったことをふと思い出す。
彼女のまぶたは腫れるどころか瞳まで充血していたのだ。
泣いた跡にできたようなもの。
それは昨夜、彼女が涙を流したということを物語っていた。
本当は泣き顔を見られたくなかったのだろう。
だから俺と目線を合わせようとしなかったのだ。
今思えば、彼女の様子がおかしいと感じる伏線はいくつかあったのに。
一体何が彼女をここまでさせたんだ?
もしかして、知らぬ間に彼女を傷つけてしまう何かをしてしまったのではないだろうか。
だとしたら…?
どんなに頭を巡らせても、答えは出なかった。
どうしたらいいのかさえも、わからなかった。
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