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次の日の月曜日。
外回りから帰って来て早々、オフィスのボードを確認すると記された文字にがっくりと肩を落とした。
またか、と思う。
『桜井』の欄の横には“NR”(ノーリターン)。
会社から外出してそのまま戻らずに直帰するという意味だ。
あの雨の夜から早くも一ヵ月が経ち、秋は終わりへと近づいていた。
そして思ったよりも早く彼女の独り立ちが決まり、二人で仕事する機会はめっきりなくなってしまったのだ。
俺が外出している時に彼女は会社に残り、彼女が外出している時に俺が残る、という完全なすれ違い生活に頭を抱えていた。
募る焦燥感と自分への苛立ち。
理由はわかっている。
俺がもたもたしているからだ。
彼女も俺も多忙を極めていた。
忙しい合間を見つけてどうにか彼女と接点をとろうとするも、彼女の分刻みなスケジュールがそれを許してくれるはずもなく。
告白どころか、あの日からまともに会話すらできていない。
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