刺客と船出と闘争と

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   気を取り直して、次発装填。  と言っても弩は無いから、アリシアが矢を天に向けて甲板に立つだけ。    ドヒュンッ!  同じ要領で矢を真上に放ち、ゲッチンゲン号へと指向させる。 「次はヘマするなよ? 絶対に命中させるからな」 「へいへい」 「ハーディスくん、一体何処を狙ってるの?」 「ワタクシもそれが疑問でした」 「まぁ見てろって、種明かししたら面白くないだろ」    一発目の矢は制御に少々不安が有ったが、二発目となれば実に簡単なものだ。  ゲッチンゲン号の船尾に突入する矢をさらに加速させると、大気を引き裂くキーンとした高音を残し、  ドバゴーン! 「ビンゴ!」  轟音と共にバラバラになった木材が舞い上がり、次々と海面に落下してゆく。    千里眼で覗う船尾の様子からは、巨大な舵が根元から完全に離断しているのが解る。 「これでちょこまかと逃げ回る事は無いだろう」 「ほー、舵を狙うたぁ面白ぇ。 だけどよぉ、ちぃっとハデさに欠けるんじゃね?」 「そうだなぁ。 念の為、もう二、三発くらい撃ち込んでおくか」 「適当だねぇ……。 でも矢はあと八本しかないよ? いいの?」 「船倉に三十本以上積んでるから、何の問題もない」 「しゃぁおらぁ! どんどん撃てやぁ!」 「くわばらくわばら……」  俺とナコルの結託を見て、アリシアは呆れ顔に、ビチビチは青い顔で口をパクパクさせていた。  
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