Prologue

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ヒビキ上人は人類最後にして最高の賢者である。黄金色の豊かな髪をたたえた若者のような姿だがすでに一三〇歳を越えている。浪費と争いの限りを尽くした数々の権力者がなおも手に入れられなかったその不老長寿の生命。それを人類で唯一許されたのがこの人である。 それはこの世界以外にいくつも存在する平行世界を旅する能力を祈りと修行の旅に捧げたからだが、それを語り始めるとまた別の長い物語ができ上がってしまう。ともかく、師匠は黄金色に輝くトランペットを取り出すとネイロに渡した。 「私は人間としては破格の才能と生命を賜った。しかし君達神話時代からの種族にに比べ呆れるほど短いのが人間の命。愚かなことにその短い命を燃やしながら戦や収奪に明け暮れ世界の均衡を乱し続けてきたのだ。普通の者には聞こえぬが、ネイロ、君なら聞こえるはずだ。天から届くハーモニーはいまや怒りの不協和音だけ。それが世界をさらに混沌と滅亡に導いている。 今日で君の修行は終わりだ。君が私の役目を引き継ぐときが来た。世界に散らばる仲間を探し、その者らと神々の音楽の謎を解いて世界を崩壊から救わねばならない」 「師匠……!」
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