君が猫でも構わない

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「ごしゅじんさま……」 うるうるした瞳で、超絶可愛い上目遣いを前に、俺は彼女を抱き締めずには居られなかった。 背中まである長い黒髪は漆黒の闇色。そこから零れる様に、うなじ、肩甲骨、腰、尻の割れ目にかかっている。 「蓮(レン)、愛してる。結婚してくれ……」 囁くと、彼女は猫に姿を変えた。 緑の目をした、黒くて若い雌の黒猫。 俺は、地面に膝を付き、途方にくれた。 そんな僕に4本足で歩み寄り、喉を鳴らして懐いて来る黒猫に、僕は確かに愛を囁いたのだが。 「時間切れぇえええ!」 神様が宣言した、終わりの合図で。 俺のファンタジータイムは終わりを告げた。 さて、どこから説明しようか。 面倒な事は言いっこなし? じゃぁ、短刀直入に言おう。 目の前の白い服着た神様に『飼い猫と結婚出来るけど、どうする? 3秒で決めて』と言われて。 結婚に踏み切るまでに、3秒で決められなかったんです。 俺は。 超絶可愛い、丸顔で、睫毛が長くて、アーモンドみたいにくりっくりの目をした。 つんとした鼻、薄桃色の薄い唇した推定18歳位の超絶可愛い少女の飼い猫と、結婚する気になるのに、3秒以上(でも、ギリギリ間に合ったと思ったのに)かかった男です。 は い。 俺は。 「じゃあ、僕帰って良い? 神様、帰って良い?」 本当に帰りたい奴は、言わなくても帰るだろ? そう思いながら、悔し紛れに俺は言った。 「もう一度、神様、お願いチャンスを下さい」 俺の言葉に、神様はしたり顔で僕に言った。 「君が僕のアソビ相手になるなら、考えてあげても良いよ。そんなに好きかい、蓮(れん)ちゃんが?」
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